おはなし

人魚姫

アンデルセン童話のせつない人魚のお話です。

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:結城ハイネ
  • 絵:ささきまゆ
  • 原作:アンデルセン童話

本文

むかしむかしの おはなしです。
ふかい うみの そこには にんぎょの くにが ありました。
ろくにん しまいの すえっこ、にんぎょひめは ちじょうの せかいに あこがれて いました。
「きょうは じゅうごの たんじょうび。とうとう うみの うえへ いけるのね」
どきどき しながら みなもへ むかって およいで いきました。

みずから ぽっかり あたまを だすと、ばらいろの ゆうひが みえます。
むこうから りっぱな ふねが ちかづいて きました。
ダンスパーティーが おこなわれて いるようです。
その なかに いちばんぼしの ごとく きらめく おうじが いました。
「すてきな かた……」
にんぎょひめは ときを わすれて うっとりと みつめました。

その よる あらしが やってきました。
いなづまが ひかり、なみが もりあがって ふねは おおきく ゆれました。
「おうじさまが おちたわ!」
にんぎょひめは むちゅうで おうじを たすけました。

なんとか りくへ たどりついた とき、おんなのひとが やってきました。
あわてて かくれた ところで、おうじが めを さましました。
「あなたが たすけて くれたのですね」
おんなのひとに ほほえむ おうじを みて、にんぎょひめは むねが くるしく なりました。

にんぎょひめは うみの まじょを たずねました。
「わたしを にんげんに してください」
まじょは にたりと わらって くすりを さしだします。
「おまえの こえと こうかんだよ」
はなせなくなる だけでは ありません。
おうじと けっこん しないと うみの あわに なって しまうそうです。
「それでも ください」
にんぎょひめは まよわず くすりを のみほしました。

きが つくと すなはまに たおれていました。
おびれが きえて あしが ありました。
ちょっと うごかす だけで ずきずき いたみます。
「どうしましたか?」
めのまえには あこがれの おうじが いました。
うれしくて おれいを いいたいのに こえが でません。
「きっと つらいめに あったのですね」
おうじは やさしく してくれました。
にんぎょひめは それだけで しあわせでした。

はしかし おわかれの ひが せまっていました。
おうじは あす、となりの くにの おうじょと けっこん するのです。
「たすけてくれた おんじん だからです」
おうじは おしえて くれました。
あなたを たすけたのは わたしなのに。
こえが でなくて いえません。

まよなか ねえさまたちが やってきました。
みんな ながい かみが みじかく なっています。
「しんでは だめよ」
「かみと こうかんで まじょから ナイフを もらったわ」
「これで おうじの しんぞうを さしなさい」
「そうすれば あなたは にんぎょに もどれるの」
「いそいで。もうすぐ よが あける」

にんぎょひめは ナイフを もって おうじの ベッドへ いきました。
けれども、できません。
だいすきな おうじさまを さすなんて。
あさひが きらきら かがやき はじめました。
にんぎょひめの からだは すきとおり、あわと なって そらへ とんでいきました。

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