おはなし
牛若丸
日本昔話「牛若丸」。
- 文章:東方明珠
- 朗読:ande
- イラスト・アニメ:ゆめある
本文
むかしむかしの おはなしです。
今から 八百五十年ほど まえ、ぶしの 源氏と 平氏が たたかっていました。
はげしい ゆきの よるでした。
「お父さまが 平氏に たおされました。にげましょう」
生まれたばかりの 牛若丸は 母おやに だかれ みやこを だっ出しました。
兄の 今若、乙若も いっしょです。
しかし、ふぶきの中 とおくへは にげられませんでした。
「源氏の 大しょうの 子どもを 見つけたぞ」
四人は つかまり 平氏の やしきへ つれていかれました。
平氏の 大しょうは じろりと にらんで 言いました。
「男は しょうらい てきに なる。くびを はねよ」
母おやは ひっしに たのみました。
「どうか いのちだけは おたすけください。わたくしは どうなっても かまいませんから」
「ならば おまえは めしつかいだ。子どもは ぜんいん ぼうさんに しろ」
兄たちは べつべつの てらへ 行きました。
あかちゃんだった 牛若丸は 七さいで くらま山へ あずけられました。
「さびしいときは かたみの よこぶえを ふきなさい」
「はい、お母さま」
牛若丸は うっそうとした 山を 一人で のぼっていきます。
「ないちゃ だめだ」
かなしみを こらえ ふえを ふきはじめた そのときです。
「めそめそしているのは だれだ」
木の 上から こえが しました。
そこには まっかな かおに たかい はなの 大てんぐが いました。
「ぼくは 源氏の 大しょうの むすこだぞ。めそめそなんて していない」
「ならば けいこを つけてやろう。よるに なったら 森へ こい」
牛若丸は ひるまは てらで べんきょうを して よるは 森へ むかいました。
「おれたちが あいてだ」
大てんぐの 手下の カラスてんぐが 右から 左から 刀を うってきます。
「こっちだ」
「あっちだ」
けいこは まいばん つづきました。
月日は ながれ 牛若丸は 十五さいに なりました。
「こんやは わしと しょうぶ しよう」
ついに 大てんぐとの うちあいです。
大てんぐの けんは かぜのように はやく かみなりのように するどくて カラスてんぐの なんばいも つよいのです。
それでも 牛若丸は まけません。
きりこんで きた けんを うけ、ひっくりかえして はげしく うちこみました。
「まいった!」
牛若丸の しょうりです。
「おまえに おしえることは もう ない。みやこへ もどり 平氏を たおすのだ」
「ありがとうございました」
そのころ みやこでは べんけいという そうりょの うわさで もちきりでした。
よるに なると 五条大橋を とおる 人から 刀を うばい、これまで 九百九十九本も あつめたそうです。
「行ってみよう」
牛若丸は うすぬのを かぶり ふえを ふきながら はしを わたりました。
「やい そこの 小さいの」
むこうから 大きな なぎなたを もった おそろしい 男が やってきました。
「こんやは ちょうど 千本目だ。こしの 刀を おれに よこせ」
「とれるものなら とってみろ」
べんけいは 力まかせに きりかかって きました。
牛若丸は ひらりと かわし はしの らんかんに のりました。
「ぼくは ここだ」
右へ 左へ 上へ 下へ じゆうじざいに とびまわります。
べんけいは 目を 回し、とうとう しりもちを つきました。
「まいりました。もう わるさは しません。どうか けらいに してください」
「わかった。ぼくは 源氏の 大しょうの むすこ 牛若丸だ」
「一生 あなたに おつかえします」
こののち 牛若丸は よしつねと 名のり べんけいと いっしょに 平氏を たおすのでした。
