おはなし
姥捨て山
日本昔話「姥捨て山」。
- 文章:東方明珠
- 朗読:ande
- イラスト・アニメ:ゆめある
本文
むかしむかしの おはなしです。
ある国の とのさまが とんでもないことを 言いました。
「年よりは やくたたずだ。六十さいに なったら 山へ すてろ」
まもらないと きびしい ばつを あたえる そうです。
人々は この 山を うばすて山と よびました。
この国に 年おいた 母おやと くらす やさしい むすこが 住んでいました。
「おっかさんを すてるなんて できないよ」
「めいれいを やぶったら たいへんじゃ。はやく うばすて山へ つれていけ」
「ゆるしておくれ」
「かなしむ ことはない。ほとけさまの ところへ 行くだけじゃ」
むすこは なくなく 母おやを せおい さびしい 山みちを のぼっていきました。
カラスの ぶきみな こえが ひびく中、ポキン、ポキンと 小さな おとが します。
ふりむくと 母おやが 木の えだを おっていました。
「これは みちしるべじゃよ。おまえが 山を くだるとき まよわないようにな」
じぶんの いのちが あぶないときに 母おやは むすこを しんぱいして いたのです。
むすこは むねが ぎゅっと くるしく なりました。
「やっぱり だめだ。いっしょに かえろう」
母おやが とめるのも きかず むすこは はしって もどりました。
「きゅうくつだが しんぼうしておくれ」
ゆか下に あなを ほり、母おやの かくしべやを つくりました。
ある日、となりの国から とのさまへ なぞときの 手がみが とどきました。
『はいで なわを なってみよ。できなければ いくさを しかけるぞ』
とのさまは こまりはて、だれか とけないかと おふれを 出しました。
「おっかさんは わかるかい?」
「もちろんさ。かたく なわを ない、しお水に つけて、かわいてから もやせばいい」
言うとおりに すると 本とうに はいの なわが できました。
とのさまは たいへん よろこびました。
「あっぱれだ。ほうびを とらす」
また べつの日 となりの国から つぎの なぞなぞが とどきました。
『ぐねぐねと まがった 竹づつに 糸を とおしてみよ』
とのさまは またもや こたえが わかりません。
むすこは ふたたび 母おやに きいてみました。
「かんたんじゃよ。かたほうの 口に みつを ぬり、もうかたほうから 糸を つけた アリを 入れてみろ」
母おやの ことばどおり アリが つつの 中を あるいて 糸を とおしてくれました。
むずかしい なぞを 二つも といたので、となりの国は いくさを やめたそうです。
とのさまは むすこに 言いました。
「そなたの おかげで たすかった。なんでも のぞみを かなえよう」
「では めいれいを やぶったことを おゆるしください。わたしは おっかさんを すてられませんでした。この なぞを といたのも じつは おっかさん なのです」
とのさまは おどろきました。
「年よりは こんなに よい ちえを もっていたのか。わしが まちがっていた」
はんせいした とのさまは うばすて山の めいれいを とりけしました。
そして かわりに つげました。
「年よりを だいじにせよ」
むすこは 母おやを たいせつにし、いつまでも なかよく くらしました。
