おはなし

わらと炭とそら豆

日本の昔話「わらと炭とそら豆」。

くわしくみる

  • 文章:東方明珠
  • 朗読:夏樹リオ(コトリボイス)
  • 絵:ゆめある

本文

むかしむかしの おはなしです。
おばあさんが そらまめを にようと していました。
ひとつぶの そらまめが ざるから ころりと おちました。
かまどに くべた わらが いっぽん はらりと こぼれ、
ひの なかから ひとつの すみが ぱちんと はじけました。

「あぶない ところだった」
そらまめと わらと すみは たすかった ことを よろこびました。
「せっかくだから たびに でよう」
さんにんは いせを めざして おまいりの たびへ でかけました。

はるの はなが さく みちを たのしく あるいて いきました。
そこへ はらを すかせた ねずみが あらわれました。
「たべられるのは そらまめだけです」
きょうふの あまり わらと すみが いいました。
「おいらは なまだ。たべられない」
ねずみは かまわず そらまめと すみを つかまえました。
すると、すみは こわくなって かっかと あかく なったのです。
「あっちっち!」
ねずみは ふたりを ほうりなげ、にげていきました。
なんとか たすかったものの そらまめは わらと すみを ゆるせませんでした。

やがて、はしのない かわが みえてきました。
「おいらが はしに なる」
わらが ねころんで かわに はしを かけました。
「おいらが さきだ。さっき たすけて やったからな」
すみが むねを はって はしを わたり はじめました。

しかし、まんなかまで きたとき、すみは したを のぞいて しまいました。
「こわいよー」
わらに しがみついて からだを かっかと あつくさせます。
「あつい!」
わらに ひが つきました。
ふたりは もえあがり、まっさかさまに かわへ おちていきました。

「さっきの ばちだ。あっはっは」
そらまめは はらを かかえて おおわらい しました。
そのときです。
ばちん!
あたまの かわが やぶれて しまいました。

いたくて ないていると、むすめさんが とおりかかりました。
「かわいそうに」
むすめさんは はりと いとを とりだし、そらまめの あたまを ぬってくれました。
ちょうどいい いろが なくて、くろい いとを つかいました。
こうして いまでも そらまめには くろい すじが のこって いるのです。

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