おはなし

鬼の爪

日本の昔話「鬼の爪」。

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:川本知枝
  • 音楽:DOVA-SYNDROME
  • 絵:中田喜久

本文

むかしむかしの おはなしです。
むらに よくばりな こめやの おばあさんが いました。
こめを かう ときは おおきな いれもの、うる ときは ちいさな いれもので はかりました。
「びょうにんにも びたいちもん まけないよ!」
どなって ばかりで、むらびとから きらわれて いました。

おばあさんは あるひ ぽっくりと しんで しまいました。
おてらの おしょうさんが そうしきの じゅんびを していると、あかおにと あおおにが てんじょうを すりぬけて あらわれました。
「そうしきは ひつよう ない」
「じごくいきが きまったからな」
おそろしい かおで おどかして きます。
ところが おしょうさんは きっぱりと ことわり、ねんぶつを となえて おにを おいはらいました。

よくじつ そうしきが おこなわれました。
「しんでしまうと それはそれで さびしいなあ」
むらびとは、ちいさな たるの かんおけを かついで はたけの みちを すすみました。
すると、つめたい かぜが ふいてきて そらが くらく なりました。
どーんと いう かみなりと ともに、くろくもの あいだから おおきな おにの てが あらわれました。
「このまま じごくに つれていくぞ」
かんおけを つまみ、そらへ もっていこうと します。
おしょうさんは りょうてで しがみつき、とりもどそうと しました。
「みんな、ねんぶつを となえるのじゃ」

「よくばり ばあさんが じごくに いこうが どうでもいい」
むらびとは くびを よこに ふりました。
けれども、おしょうさんは いいました。
「どんな あくにんでも しにんに つみは ない」
たしかに そうだと おもった ひとりが おしょうさんの おきょうを ひろって よみはじめました。
「いわれて みれば はかが ないのも かわいそうだ」
ひとり、また ひとりと ねんぶつに くわわります。
「やめろ、やめろ」
くるしくなった おには とうとう あきらめて てを ひっこめました。
かんおけには するどい おにの つめが ささったままに なっていました。

いまでも とちぎけんの えんつうじ には このとき よごれた おしょうさんの きものが のこっている そうです。

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