おはなし

おやゆび姫

アンデルセン童話の小さなお姫様のおはなしです

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:川本知枝
  • 絵:木咲朝日
  • 原作:アンデルセン童話

本文

むかしむかしの おはなしです。
おおむぎの たねから チューリップの はなが さきました。
まっかな はなの なかには ちいさな おんなのこが いました。
おやゆびひめ です。

おやゆびひめは ひるは おひさまの もとで うたい、
よるは くるみの ゆりかごで ねむりました。
そこへ ひきがえるが やってきました。
「なんて かわいらしいの。むすこの およめさんに しましょう」
ゆりかご ごと つれていき、すいれんの はっぱへ のせてしまいました。

「かわいそうな おひめさま」
かわの なかから さかなが ぴょこんと かおを だしました。
「くきを きって あげる」
ぷちんと おとが して はっぱは ゆらゆら ながれました。
「こっちよ」
ちょうが とんできて みちを おしえて くれます。
ところが とちゅうで ながれが はやくなり、みんなと はぐれて しまいました。

おやゆびひめは ひとりぼっちで もりの なかを さまよいました。
なつが すぎ あきに なり、さむい ふゆが きました。
おなかは ぺこぺこ です。
そんなとき のねずみの いえを みつけました。
「たべものを わけて ください」
「もちろんよ。どうぞ おはいり」
のねずみの おばさんは しんせつでした。
おやゆびひめは ここで くらすことに なりました。

あるひ もぐらの おじさんが たずねてきました。
「かわいい こだね。うちの トンネルへ あそびに おいで」
おひさまが だいすきな おやゆびひめは きが すすみません。
けれども のねずみは うれしそうです。
「おじさんは おかねもちなのよ」
もぐらと けっこんしたら しあわせだと おもったのです。

おやゆびひめは のねずみに いわれて トンネルへ いきました。
すると きずついた つばめを みつけました。
「しっかりして」
てあてを すると つばめは げんきに なりました。
まいにち たべものを はこぶ うち、ふたりは ともだちに なりました。

はる です。 おやゆびひめと もぐらの けっこんしきが きまりました。
「ちかで くらすなんて いや」
「それなら、いっしょに みなみの くにへ いこう」
おやゆびひめは つばめの せに のり、のを こえ やまを こえ とんで いきました。

やがて おしろが みえてきました。
きらきら かがやく みずうみの ほとりに はなが さきみだれています。
しろい はなの なかに すばらしい はねを はやした おうじさまが たって いました。
「ぼくは はなの てんし です。どうか およめさんに なってください」
おやゆびひめは よろこんで うなずきました。
てんしの おひめさまに なった おやゆびひめは だいすきな おひさまの もとで いつまでも しあわせに くらしました。

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