おはなし

よくばりな犬

よくばりすぎると痛い目にあう有名なお話です。

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:結城ハイネ
  • 絵:森のくじら

本文

むかしむかしの おはなしです。
ふとった いぬは おなかが ぺこぺこでした。

ちょうど にくやの まえを とおりかかると、おいしそうな においが します。
「いちばん おおきな にくを ぬすんでやろう」
しゅじんが うしろを むいた すきに ちかづいていき、がぶり!
ほねつきの たっぷりした にくを てに いれました。

いぬは にくを くわえて はしりだしました。
「どろぼう!」
すぐに きづいた しゅじんが おいかけてきます。
いぬは むらじゅうの みちを しっていました。
どろんこみちを とおって やぶみちを ぬけ、ほそいみちを はしりぬけます。
やがて、にくやの しゅじんの すがたは みえなくなりました。

(しめしめ これで にくは おれの ものだ)
いぬは はなうたを うたいながら かわぞいの みちを あるきました。
こんなに おおきくて いいにおいのする にくは ひさしぶりです。
(すぐに たべてしまうのは もったいないぞ)
だれかに じまんして やろうと おもいました。

いぬは おおいばりで はしを わたりました。
とちゅうで ふと したを みると、かわの なかに しらない いぬが います。
あちらも にくを くわえています。
ほねつきの ぷりぷりした おおきな にく です。
(おれのより おいしそうだ)
なんてこと でしょう。
いぬは くやしくて たまりません。

(そうだ、あいつを おどろかして やろう)
いいことを おもいつきました。
こわい かおで ほえれば、おどろいた いぬは にくを すてて にげていく でしょう。
(そうすれば あの にくも おれの ものだ)

いぬは かわの なかの いぬを にらみつけました。
そして おおきな こえで ほえました。
「ううー、わん!」
その ときです。
くわえていた にくが するりと はずれて かわへ おちていきました。

ぽちゃん。

ゆらゆら ゆれる みずの なかには しょんぼりした かおの いぬが います。
かわの なかの いぬは すいめんに うつった じぶんの すがた だったのです。

だれかの もちものは じぶんの ものより よく みえます。
けれども ほんとうは ちがうのかも しれません。
いぬは よくばった せいで せっかくの ごちそうを なくして しまいました。

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