おはなし

でんでんむしのかなしみ

新美南吉作「でんでんむしのかなしみ」の朗読作品。

くわしくみる

  • 絵:ハットリミホコ
  • 原作:新美南吉

本文

いっぴきの でんでんむしが ありました。
あるひ、その でんでんむしは、たいへんな ことに きが つきました。

「わたしは いままで、うっかりして いたけれど、わたしの せなかの 
からの なかには、かなしみが いっぱい つまって いるではないか。」

この かなしみは、どう したら よいでしょう。
でんでんむしは、おともだちの でんでんむしの ところに やっていきました。

「わたしは もう、いきて いられません。」
と、その でんでんむしは、おともだちに いいました。

「なんですか。」
と、おともだちの でんでんむしは ききました。
「わたしは、なんと いう、ふしあわせな ものでしょう。わたしの 
せなかの からの なかには、かなしみが、いっぱい つまって いるのです。」
と、はじめの でんでんむしが、はなしました。

すると、おともだちの でんでんむしは いいました。
「あなたばかりでは ありません。わたしの せなかにも、かなしみは いっぱいです。」

それじゃ しかたないと おもって、はじめの でんでんむしは、
べつのおともだちの ところへ いきました。

すると、その おともだちも いいました。
「あなたばかりじゃ ありません。わたしの せなかにも、かなしみはいっぱいです。」
そこで、はじめの でんでんむしは、また べつの、おともだちの ところへ いきました。

こうして、おともだちを じゅんじゅんに たずねて いきましたが、
どの ともだちも、おなじ ことを いうので ありました。

とうとう、はじめの でんでんむしは、きが つきました。
「かなしみは、だれでも もって いるのだ。わたしばかりではないのだ。
わたしは、わたしの かなしみを、こらえて いかなきゃ ならない。」
そして、この でんでんむしは、もう、なげくのを やめたので あります。

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