おはなし

証城寺の狸囃子(しょうじょうじのたぬきばやし)

日本の昔話「証城寺の狸囃子」。

くわしくみる

  • 朗読:梅田朱理(コトリボイス)
  • 文章・絵:ゆめある

本文

むかしむかしの おはなしです。
たけが たくさん はえている やまおくに しょうじょうじ という おてらが あります。
ひるでも うすぐらく よるに なると おばけが でると うわさ されて います。

わるい うわさの せいで ひとけが ない おてらに きれいずきな おしょうさんが やってきました。
「ずいぶんと あれた おてらじゃ さっそく きれいに するかのう」
おしょうさんは てきぱきと そうじを して おてらは きれいに なりました。
いつのまにか あたりは すっかり よるに なっていました。
「おしょうさん おつかれさまです かたを もみましょうか?」
「おー ありがとう きがきくのう」
「…ん?」
おてらには おしょうさんしか いない はずです。
ふしぎに おもい おしょうさんは うしろに かおを むけます。

「おばけ だぞー!」
そこには ひとつめこぞうと ろくろくびの おばけが います。
「ぎゃー!」
おしょうさんは そのひの うちに おてらを でていって しまいました。
「うまくいったね」
「さくせん せいこう みんな へんしんを とこう」
ぽんっ
なんと おばけの しょうたいは たぬきたち でした。

しばらくして にっこり えがおの おしょうさんが おてらに やってきました。
「あたらしい おしょうさんが きたぞ また おどろかして おいだそう」
たぬきたちは よるになると またおばけに へんしん しました。
「おばけ だぞー!」
しかし おしょうさんは まったく おどろきません それどころか にっこり わらっています。
「かわいい おばけじゃ」
たぬきたちの わるだくみは しっぱい しました。

つぎのひの よる たぬきたちは おてらの にわに あつまりました。
「おどろかないなら じまんの はらだいこで おおさわぎして おしょうさんを おいだそう」
ぽんぽこ ぽんの ぽん! ぽんぽこ ぽんの ぽん!
たぬきたちの はらだいこが しずかな よるに ひびきわたります。
「わしも いれてくれー!」
おてらから しゃみせんを もった おしょうさんが でてきました。
べんべん べべん べんっ! べんべん べべん べんっ!
おいだす どころか おしょうさんは たぬきたちと いっしょになって たのしそうに しゃみせんを ならしています。
「おしょうさんに まけるなー!」
ぽんぽこ ぽんの ぽん! ぽんぽこ ぽんの ぽん! ぽんぽこ ぽんの ぽん!
しゃみせんの おとに まけないように たぬきたちは はげしく はらだいこを たたいています。

ぱーん!
ちからいっぱい たたいたので たぬきの おなかが やぶれて しまいました。
「いたたたたたたた」
「こりゃいかん すぐに てあて してやるからのう」
おしょうさんは たぬきの おなかを てあて して あげました。
「いたずらして ごめんなさい てあて してくれて ありがとう」
「いいんじゃ いいんじゃ けがが なおったら また はらだいこを きかせておくれ」
たぬきたちと おしょうさんは にっこりと わらいあいました。

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