おはなし

ぶんぶく茶釜(ぶんぶくちゃがま)

茶釜に化けたタヌキの不思議なお話。

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:川本知枝
  • 絵/アニメ:ゆめある

本文

むかしむかしの おはなしです。
はらぺこ たぬきが
おてらへ しのびこみました。

「おいしそうな おまんじゅうが ある」
たぬきは ほとけさまの おそなえを みて、
ごくりと のどを ならしました。
ところが、
「だれか いるのかい?」
そこへ おしょうさんが やってきました。

たぬきは ぽわんと ちゃがまに ばけました。
「おや? ちょうど よい ちゃがまだなあ」
おしょうさんは たぬきの ちゃがまに みずを いれ、
ひに かけました。

ぶく、ぶく ぶんぶく。
「あつい!」
たぬきが さけぶと、おしょうさんは びっくり。
「きみが わるいな。
ふるどうぐやに ひきとってもらおう」

ふるどうぐやは ちゃがまが とても きにいりました。
「こんやは ごちそうに しよう」
あかい さかなと まっしろの ごはんを ならべます。
すると、ちゃがまの ふたが あき、
ごちそうを ぺろり!

ちゃがまに てが はえ あしが でて、
たぬきの かおが あらわれました。
「おじさん、ごちそうさま!
おれいに おかねもちに してあげるよ」

たぬきは みせものごやを ひらきました。
ひのまる はちまきに せんすを ひろげ、
つなわたりを します。
「♪ぶんぶくちゃがまに てが はえて
ぶんぶくちゃがまに あしが でる」
ようきな うたに あわせて おどりました。

ぶんぶくちゃがまの つなわたりは、
たちまち だいにんき。
おじさんの くらしは らくに なりました。

「なあ、たぬきくん。つかれただろう?
じゅうぶん おかねも かせいだし、
ここらで おわりに しようや」
おじさんは やさしく たぬきに いいました。
「これから どうしたい?
こんどは おれが ちからに なるよ」
たぬきは しばらく かんがえてから こたえました。
「ほとけさまの ように、
しずかに くらして みたいものだ」

ふるどうぐやの おじさんは、
おしょうさんに おねがいしました。
はなしを きいた おしょうさんは
かんどうして たぬきを ひきとって くれました。

それから たぬきは、
おてらで しずかに くらしました。
いまでも 「もりんじ」 という おてらには
ぶんぶくちゃがまが たいせつに されています。

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