おはなし

笠地蔵

貧しくも、心優しいおじいさんとおばあさんのお話。
人を思いやる気持ちは大切で、必ず自分に返ってきます。

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:川本知枝
  • 絵/アニメ:ゆめある

本文

むかしむかしの おはなしです。
「あしたは おしょうがつ。
おもちを たべたいですねえ」
おばあさんが いいました。
「たきぎを うって、おもちを かってくるよ」
おじいさんは まちへ でかけて いきました。

おおみそかの まちは おおにぎわいです。
「たきぎは いらんかねー?」
おじいさんの こえは なかなか とどきません。

「やれやれ、こまった」
そこへ、かさうりが やってきました。
「たきぎは うれましたかな?」
「いいえ、ぜんぜん」
「わしもです。どうでしょう、
たきぎと かさを こうかんしませぬか?」
ふたりは とりかえっこを して にっこり ほほえみました。

かえる とちゅうで、ゆきが ふってきました。
「おや、あそこに みえるのは……」
しろい あたまが いち、に、さん、し、ご、ろく。
ゆきを かぶった おじぞうさま でした。

「さむいでしょう。この かさを どうぞ」
おじぞうさまに かさを かぶせます。
ところが かさは 5つ。
おじぞうさまは 6たい。
ひとつ たりません。

「そうだ。
わしの ほおかむりを つかってください」
さいごの おじぞうさまには、
じぶんの てぬぐいを かけて あげました。

いえでは おばあさんが しんぱいして いました。
「ぶじで よかったです」
「おもちを かえなくて ごめんね」
「いいんですよ、そんなこと」
おじいさんは きょうの できごとを はなしました。
「それは ほんとうに よいことを しましたねえ」
ふたりは しあわせな きもちで ねむりに つきました。

まよなか、ふしぎな こえが します。

えっさ ほいさ
はこべや はこべ

「だれだろう?」
そうっと とを あけてみました。
そこには、おもちや やさいが どっさり!
はるか むこうに かさが 5つ みえます。
「あれは、おじぞうさま!」
いちばん うしろを あるくのは、
てぬぐいを かぶった おじぞうさま でした。

「なんて ありがたい」
ふたりは ふかく かんしゃ しました。
そうして いつまでも しあわせに くらしましたとさ。

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